No.1 製品カタログ(パンフレット、リーフレット)のデザイン
製品カタログって?
カタログというとたくさんの製品(商品)を掲載し、分厚く製本された冊子を指すのが元々のようですが、私たちの仕事では1枚物のリーフレットやホッチキスで中綴じした数ページのパンフレットも含めてカタログと呼んでいます。
「ちらし」との違いは、大量宣伝に向けた折込やポスティング広告などではなく、営業担当やスタッフの人たちが製品を説明する目的で、場合によってはその紙面を指し示しながらお客様に説明することを想定しています。それはお客様にお渡した後も残って、必要に応じて資料として参照、回覧されたりするものです。
製品カタログの目的
製品カタログは製品の目的・機能・比較優位を正確に紹介することが目的ですが、その直接の目的を達成するだけではカタログはその使命を充分に果たしたとは云えません。
分厚く製本されたカタログであれば、即座に不要とされるのでなければ、多くの場合しばらくは手元に残して記憶してもらえますが、パンフレット、リーフレットは、すぐに有用でなければ、つまりすぐに商談に結び付くのでなければ、生き残ることは難しい運命にあります。
製品の素晴らしさに加えて、それを紹介する営業担当者も加えて、製品を開発した企業への関心、好奇心、好感度がカタログの運命を握っています。(販売する企業への好感度、もっと云えばロイヤリティを目指して、カタログをはじめすべての販促物が作られていることは云うまでもありませんが)
製品カタログのデザイン
私たちは製品カタログを制作するにあたって、まず製品の目的・機能・比較優位を的確に伝えるためのデザイン。そして、製品の開発者・生産者への関心、共感を引き出すためのデザインという2つの側面から皆様の製品・商品のご説明をうかがい、ご要望と想いに耳を傾け、形にしていくことを考えます。
それでは、製品の目的・機能・比較優位性などを的確に伝えるためのデザインという側面からお話ししましょう _次回へ_
No.2 製品カタログ(パンフレット、リーフレット)のデザイン ―2―
カタログデザインの要素
カタログの紙面はテキスト、写真、図版(イラスト)の3つの要素で構成されます。さらにそれらの組合せと、土台になる紙に関してもデザインの役割となる部分が多々あります。
紙のサイズ(A4とかB5など)やページ数などはデザインの守備範囲を超えていますが、その検討が含まれることもあります。どのような紙質(コートかマットかファンシーかなど)にするかの選択もデザインも含めた多方面に関わる事項です。
文章を作ったり写真を撮ることは別の仕事ですが、それらをどう配置し、どう見せるか、その大きさや量(文字数)などはデザインが関わることになります。
レイアウト
カタログを構成するテキスト、写真、図版の組み合わせ、配置を決めるのがレイアウトです。部屋のベッドや机、お気に入りのポスターやギターの定位置を決めるのと同じです。多くの場合、会社の製品カタログとしてのフォーマットを作って、それに準じて個々の製品情報をレイアウトしていくのが基本といえるでしょう。
製品の特長やターゲットとなるマーケットが大きく異なる場合などは、それに応じてデザイン、レイアウトを変えることが必要になりますが、会社ロゴマークや社名・住所周りの表現の統一は維持することが望ましいと考えます。
殊にページ数の多い製品カタログではこのレイアウトが最も大きなウェイトを占めます。名称、製品コード、写真、説明文、スペック、図版などの配置を、製品の特長が的確に表現でき、且つユーザーが戸惑うことなく理解できるようにレイアウトすることが最も重要な点です。1ページに複数の製品を掲載する場合などはこの傾向は一層強くなります。
また、ページ数が多くなれば、製品の分類に応じて幾種類ものフォーマットを用意する場合もあります。他方で理解を容易にするという点では他社のカタログも含めてフォーマットは似通ったものになりがちなので、そのうえでのユニークさを考えることが必要です。
3つの要素について
テキスト。デザイン制作の現場ではコピーと云う場合が多いですが、表現する内容や重要度に置いて様々なものがあります。キャッチコピー、サブキャッチ、リード文、説明文、キャプション、あるいは仕様、特長、使用例、お客様の声・・・・様々な目的に応じた文章があり、一つのカタログの中に必要に応じて掲載・配置していくことになります。
当社では、お客様が用意されたコピーを使うことが多いです。一方でキャッチコピーをお客様と一緒に考えることもしばしばです。リード文や説明文をリライト(言い回しの統一など)することは よくあることです。また、専門のコピーライターに依頼して、お客様資料から文章を起こしたり、お客様やそのユーザーにインタビューをして文章を作成することもあります。
文章は何より、的確に表現することと、印象(強く、さわやかに・・・など)に残ることを目指しています。同時にデザインの見地からはそれらの文章の配置や他の要素とのバランス、フォント(書体)、カラーと云ったものが直截の仕事になります。
次回はフォント(書体)についてカタログ制作を必要とする皆さん、初めての方、まだ慣れないなと感じている方に向けて書いていく予定です。
製品カタログ(パンフレット、リーフレット)のデザイン ―3―
企業の中などで、新しくカタログ制作に取り掛かることになった方、始めてはいるがまだ慣れないなと感じている方に向けて制作会社、デザイナーの立場で参考にしていただけることを願ってこの文章を続けています。
カタログの制作に使うフォント(書体)
今回はフォントについて述べてみます。デザインの側からは、「フォントを選ぶ」ことより、フォントで綴られたコピーをどう配置するかの方が重要ですが、入り口としてはまずフォントから。
日本語の書体は大きく分けて明朝とゴシックおよびそのバリエーションと筆文字などを含むデザイン系の文字に分けられます。ユーザーの安定した信頼感を重視する製品カタログでは明朝、ゴシックのバリエーションから、さらにゴシック系のそれらから選ぶのが大半です。
カタログのデザインをする場合、ほとんどのデザイナー、制作担当者はApple社のMacを使い、Adobe社のイラストレータを利用します。そして、書体はモリサワのフォントがほとんどの場合基本です。MacOSXの現在のあらかじめ搭載されている日本語フォントは「ヒラギノ書体」の明朝、ゴシック、丸ゴシックです。ゴシックは太さのバリエーションがあります。
ほとんどの企業で一般の社員の方が使われているWindowsでも、Adobe社のイラストレータで同じように作業ができます。筆者も最近ではもっぱらWindowsで作業をしています。WindowsではMS(P)明朝、MS(P)ゴシックにメイリオ、游ゴシック、游明朝などでしょうか。
しかし、カタログの制作現場では、これらのあらかじめ搭載済みのフォントではなく、「モリサワ」「フォントワークス」などの書体メーカーからライセンスされるものを使っています。
当社ではモリサワからパスポート(https://www.morisawa.co.jp/products/fonts/passport/fonts/)としてライセンスされているものを基本にしています。
モリサワパスポートに含まれる書体は外国語も含めて1000書体以上あるようですが、実際に使うのはその中のごく一部です。日頃どのような制作物をデザインしているかによって常時MacやPCに入れておくフォントの傾向はかわってきます。さらに筆者などは筆文字に分類される教科書体はモリサワではなくダイナフォントを使ったりしています。
もちろん、お客様がパワーポイントなどでデザインされたものをベースに制作する場合などは、ご希望によってWindowsのフォントを利用することもあります。
ちなみに、ゴシック系が多いと前に書きましたが、工業製品のカタログをデザインすることの多い筆者はモリサワの新ゴ、ヒラギノ、カクミンを利用することが多いです。安定感を重視して、横組の横方向の流れのいい可読性をフォント選択の基準にしています。
一方で、同じゴシック系でも力感が欲しければ違う選択もありますし、柔らかい感じの丸ゴシック系のフォントを適宜使うこともいいでしょう。但し、あまり多くの種類を使うのは控えた方がいいと思います。
当社では、単品の製品カタログを作成し、WebSiteに展開することが多いのですが、カタログのキャッチコピーをフォントも含めてそのままWebのページにレイアウトしたい場合、これまで、Webでは画像にしなければなりませんでした。WebSiteは制作側でフォントファミリーを指定するものの、実際の表示はクライアントに搭載されたフォントを利用する仕組みでした。
これに対してクライアントに依存するのでなく配信側で希望するフォントを表示させるWEBフォントという仕組みが最近、日本語でも使われるようになってきています。
ライセンス費用やデータ量の問題など制約は多いものの、当社でも最近利用する機会がありました。これからはフォント選びの選択肢も少し変わってくるかもしれません。